おすすめの本

自然の中で

  • 掲載日:2024年4月15日
  厳しくも美しい自然の中での暮らしには、都会の日常とは一味違う人々のふれあいが有ります。そうした環境で生きる恋人、家族、少年達を描いた本を選びました。
狼の幸せ
パオロ・コニェッティ/著 
飯田亮介/訳 
早川書房
 
 アルプス・モンテローザの麓の小さな村が舞台です。日常生活をスケッチするように36の短い章をつないで物語は淡々と進みます。芽を出した場所で生き抜くしかない木、食べ物を求めて移動する草食動物、本能のおもむくままにあちこちを渡り歩く狼、それらになぞらえて夫々の幸せを求め行動する二組の男女の姿が描かれます。
神さまたちの遊ぶ庭
宮下奈都/著 
光文社

 
 北海道のトムラウシという集落で暮らすことになった宮下一家の一年間を日記形式で綴っています。一番近くのスーパーが37㎞先という不便な所で、暮らしに遊びに本気で取り組む人々との濃密な時間が過ぎていきます。個性的な3人の子供たちの言動にもついつい頬が緩んでしまう楽しいエッセイです。  
 
世界のはての少年
ジュラルディン・マコックラン/著 
杉田七重/訳
東京創元社
 
 18世紀のイギリスで起きた実話を元にした物語です。予期せぬことから海に浮かぶ島ともいえぬ小さな岩の上で生き抜くことを強いられた、3人の大人と9人の少年たち。読む者も心折られそうになる過酷な試練が次々と降りかかります。安全なはずの場所で儚く死んでしまう人々がいる一方で、凄惨な状況になっても生きのびていく人間達に、生命の不思議な強さを感じます。