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2022年10月号 家族特集

13枚のピンぼけ写真

キアラ・カルミナーティ/著 関口英子/訳 古山拓/絵 

岩波書店

  第一次世界大戦時の北イタリア。戦争の足音がどんどんと近づいてくる中で、13才のイオランダと妹は家族と離れ離れになってしまう。別れ際に母が会いに行くように言い残した遠い親戚の女性を訪ねた2人。そこで両親の生い立ちや結婚の経緯、祖母の存在を初めて知ることに…。もつれた家族の糸を解きほぐし、生きる力を自らの手でつかみ取っていく少女の物語。

 つらい状況の中、戦争がなければ知ることはなかったかもしれない家族の秘密が明らかになっていく過程は、読んでいて希望が湧いてきます。物語の節目には写真のイラストがあります。ピンぼけ写真なので説明を読まないとどんな写真なのか分かりませんが、物語とリンクしているのでお見逃しなく。


  本文を読めば、ピンぼけ写真の解像度が上がるかも?

   

母さんは料理がへたすぎる

白石睦月/著

ポプラ社

 高校に入ったばかりの山田龍一朗の家族は、仕事をしているお母さんと年の離れた三つ子の妹たち。3年前に事故で死んでしまったお父さんに、生前料理を仕込まれていた龍一朗は、家族の食事を一手に引き受けている。料理や妹たちの面倒を見るのは嫌いじゃないし、忙しくて充実した毎日を過ごしているけれど…。

 龍一朗だけでなく、お母さんや妹たちも語り手になる物語。語り手の一人には、亡くなった後のお父さんもいます。お父さんが亡くなった後何をしているのかは、読んでみてのお楽しみです。それぞれのお話に出てくる美味しそうな料理とともに、山田家の家族が互いに何を思っているかが見えてきます。


 料理がつなぐ、家族のきずな。

   

どんぐり喰い

エルス・ペルフロム/作 野坂悦子/訳

福音館書店

 舞台は内戦終結から数年後のスペイン・アンダルシア地方。貧しい大家族の長男として生まれた主人公クロは、8才で学校をやめて家計を助けるために働き始める。大工の手伝いやオリーブの収穫など、様々な仕事を経験しながらたくましく成長していくクロ。オランダを代表する児童文学作家ペルフロムが、夫の少年時代の話をもとに書き上げた「金の石筆賞」を受賞した名作。

 主人公クロは困難に直面した時、機転をきかせてたくましく明るい心でやり抜きます。さらに貧しいなかでも鳥の歌声の美しさを大切にするピュアな心や、だれよりもかっこいいと両親を誇りに思う気持ちは、この物語の魅力のひとつとなっています。

 
 
お金もない。食べ物もない。でも、家族がいる。